湖泥
(チャンスコミック創刊号〜 昭和52年) |
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「劇画・八つ墓村」(下記)でその名を知って以来、つねに探し求めてきたチャンスコミック本誌のゲンブツをついに入手。ただし、「湖泥」は三回連載の第一回のみ。
ストーリーは原作に実に忠実。金田一耕助が吸い殻を湖に投げ捨てるイケナイ場面までていねいに書き込んである。
第1回目は行方不明の御子柴由起子の全裸死体が発見され、片眼がえぐり取られていることが判明する場面まで。
金田一耕助はスッキリとしたトヨエツ顔で、本格的な活躍は2回目以降といった感じです。
なお、左の雑誌の表紙を描いたのは掛布氏ではなく、雑誌「幻影城」や東都書房の「横溝正史傑作選集」などの表紙を手がけた上西康介氏。
次々と登場する金田一コミックの全貌を突き止めることができるのは、いつになるのだろうか・・・?
掛布しげを「湖泥」二回目以降の展開を御存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひとも情報をお寄せ下さい。
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清水巡査「あっ」
耕助「全裸の死体!」
金田一さん、アンタ喜んでるだろ? |
女王蜂
(チャンスコミック臨時増刊 昭和53年) |
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吉川十和子を彷彿とさせる美女の表紙は、掛布しげをが描いたものではない。
右下の隅に小さく「Gojin」とサインしてあることから、挿絵画家の石原豪人氏の筆によるもののようだ。
全裸で両手を広げている女性には、蝙蝠のような翼が描かれている。心憎い演出である。
物語は原作を踏襲しており、特筆すべきことはない。
画も成年誌にありがちな、あまり手間をかけずに量産できるタイプのもの。
それにしても、掛布しげをとは一体何者であろうか。
「女王蜂」が描き下ろしで発売された頃、「チャンスコミック」本誌では「湖泥」「八つ墓村」と立て続けに連載中であったはず。恐るべき生産力のわりに、他の作品を見たことはない。
ペンネームも人気の野球選手の名前を寄せ集めただけの安易なもので、実在すら疑わせる。
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女王蜂
(チャンスコミック臨時増刊 昭和53年) |
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で、こっちがおそらく掛布しげをによる表紙絵。
「横溝正史シリーズII」でのドラマ化を受けて、わずか半年で再販されたもの。
この版が凄いのは、ページの折り数の都合で、ラスト1ページを割愛してしまっていることです。
原作でいえば、いちばん最後のパラグラフ「しかし、衣笠氏は…」の箇所をとってしまい、直前の「陽は沈む……。」で物語が終わってしまうことになるわけだ。
晩年、自作の「山椒魚」のラストをごっそり削ってしまった井伏鱒二もビックリの改変である。 |
劇画 八つ墓村
(別冊チャンスコミック 昭和53年) |
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インターネットのオークションで、目の玉が飛び出そうな値段で落札。
どうにも口惜しいので、ここで紹介することで元を取ろうと考えた。
よい子の読者の皆さんは、決してマネをしないでくださいね。
さて、今にも拡散波動砲を吐きそうな田治見要蔵の表紙に、キワモノらしさを感じていた掛布しげをの「八つ墓村」だが、意外にマジメに原作に取り組んでいる。
中でも、原作では金田一のセリフでしか語られない真犯人との対決場面をきっちり描いたことや、原作にも映画にもなかった余韻たっぷりの独自のラストシーンを用意したことは、特筆に値しよう。
あっちこっちで説明的な長セリフが頻発するのはご愛敬としても、わずか200ページ足らずでこれほどまとまった「八つ墓村」ができるとは思ってもみなかった。「構成」の肩書きはダテではなかったわけだ。
残る問題は、ひとコマひとコマにいろいろな線を書きすぎて見づらい、ということだろうか。セリフの長さと相まって、相当損をしていると思うのだが。
他に
- カラー口絵でTVと映画の「八つ墓村」スチール写真を紹介(4P)
- 幻の八つ墓村を訪ねて−伯備線の旅−(2P)
- 望月一虎の1Pマンガが2題(「八ツ墓村ミステリー」「オレ現代の金田一耕助」)
を収録。
「幻の八つ墓村を訪ねて」は、案内図の端が中途で断ち切られているなど、他誌からの転載であることが明白。
望月のマンガは、「八ツ墓村ミステリー」が、「八つ墓村」を読みかけで眠ってしまった男の夢に落武者が登場、枕元の「八つ墓村」を手に取って「これは面白い」と持って行ってしまう話。
「オレ現代の金田一耕助」は、「コロしだーッ!」の声に金田一が駆けつけてみると、犬がひき逃げにあったとわかり、スゴスゴと帰るという、信じられないくらいヌルいオチ。
どっちにしても、ン千円も出すほどの価値は、ない。 |
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巻末の「女王蜂」の広告
読むのが先か! 見るのが先か!
考える前に、一番安い劇画で行こう!
という安いコピーが泣かせる
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「八つ墓村」の金田一初登場シーン。耽美な雰囲気に、てっきり美化して描いているのかと思ったら・・・。 |
そんなことはなかった(笑)
ちなみに「畜生ッ」と叫んでいる鬼瓦みたいなのが磯川警部。
馬券がハズレて悔しがっているわけではない。 |