八つ墓村
(講談社 昭和51年) |
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昭和43年から44年にかけて「週刊少年マガジン」に連載され、大人気を博した影丸版「八つ墓村」である。当時角川書店編集局長だった角川春樹は、本作のヒットに着目し、横溝正史の原作を角川文庫に収録したと言われている。
なるほど、そう言われてみればたしかに角川文庫の1冊目は「八つ墓村」だし、知る人ぞ知る初版の表紙は、落武者の生首が浮かんでいる劇画調のものだった。来るべき横溝ブームは、初手から漫画週刊誌を読む若い人たちをターゲットに据えていたのだ。
96年の東宝映画「八つ墓村」公開時に至るまで、何度となく復刻されてきたが、この講談社漫画文庫版の表紙が、もっともセンスが良いように思う。
寺田辰弥を軸として上下巻の構図を意図的に似せているが、よくよく考えたら背景の人物も、同じ田治見要蔵なのである。
ところで、影丸譲也といえばデビュー作のタイトルが「怪獣男爵」(久保本實名義/1958年 あたみ社刊)ということで、こちらも横溝原作か、と思われがちだが、これは単なる偶然の一致で、同題の横溝のジュヴナイル作品とは無関係のようだ。
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「八つ墓村」の素浪人みたいな金田一と磯川警部。
金田一さん、その家紋はエレベータのボタンですか?
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悪魔が来りて笛を吹く
(東京スポーツ新聞社 昭和54年) |
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出版年と表紙の画をご覧になっておわかりになるだろうか? 本書は、東映映画「悪魔が来りて笛を吹く」の完全コミカライズなのだ。
原作に忠実というより、映画脚本を実に忠実に劇画化しており、それはそれで貴重である。時折り、スチール写真と全く同じ構図を劇画で再現するあたり、芸が細かい。
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まあ、ざっとこんな感じ
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悪魔が来りて笛を吹く
(講談社漫画文庫 平成13年7月12日初版発行) |
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2001年7月、なんと講談社漫画文庫から復刊された。しかも東スポ版より6ページ、本編が長くなっている。
東映映画とのタイアップだった東スポ版では、映画のスチール写真なども掲載されており、今回はそれがなくなった分のページ調整を計ったと思われる。それにしても、20年以上も昔の漫画にも手を抜かずに修正を施す影丸の職人魂には、敬意を表したい。
ただし、映画とのタイアップだったという本編成立の背景や初出などが一切紹介されていないのは、不親切ではなかろうか。解説の有栖川有栖まで「原作の雰囲気もよく伝えていて素晴らしい」と、東映映画との関係に触れていないのは、不自然を通り越して不勉強と受け取られかねないと思うのだが。 |
霧の別荘の惨劇
(サスペリアミステリー 平成18年9月号) |
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なんだか往年のグループサウンズが再結成したみたいなキャッチコピーだが、影丸金田一が復活した。
サスペリアミステリー誌で金田一ものを描いている長尾文子が、影丸のアシスタントを務めていた経歴の持ち主なので、「弟子もいいけど師匠に描いてほしい」という思いもあるにはあった。まさかこんな唐突に実現するとは、思ってもみなかった。
若い漫画家さんとは年期が違って、背景を効果線などでごまかさずに、きっちりと書き込んでいるので、ひとコマひとコマが濃密である。
ところどころ影丸らしからぬタッチの人物が見られるので、アシスタントの養成のためにもサスペリア誌で金田一コミックの連載をしてもらいたい(笑) |