八つ墓村
(富士見書房→秋田書店) |
|
昭和51年、角川映画「犬神家の一族」公開に足並みを揃えるかのように、富士見書房の「ワイルド・コミックス」の書き下ろしシリーズとして、10月に「八つ墓村」と「犬神家の一族」が、12月に「悪魔の手毬唄」が刊行された。
この3部作は、昭和59年に秋田書店から、また平成13年には講談社漫画文庫から「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」が復刊されている。
講談社版で「八つ墓村」が復刊されなかった理由は、よくわからない。おそらく、先に同文庫から影丸譲也の「八つ墓村」が刊行されており、タイトルの重複を避けたためと思われるが、格別の根拠はない。
つのだ「八つ墓村」が現役で読めないなら、古本にあたるしか手はないのだが、比較的入手しやすい秋田書店版(以下新版)より、苦労してでも富士見書房版(以下元版)で読まれることをお勧めする。
実は元版では冒頭の16ページが赤黒二色刷りなのだが、新版ではこの赤版がスッポリと抜け落ちている。
|
「犬神家」や「手毬唄」では赤版は服の色や背景にしか用いられず、文字通り「色をそえる」程度の扱いなのであってもなくても気にならないが、「八つ墓村」では尼子の落ち武者狩りに端を発する祟りの顛末が語られている。惨劇に次ぐ惨劇の、血がドバーッ、がすべてこの赤版で表現されているのだ。
新版では、首を斬られ、槍で突かれる落ち武者から血が流れていない。元版の、血まみれでのたうち回る落ち武者を見てしまうと、段違いに迫力が違う。
「たたりじゃ〜〜〜〜〜ッ!」を実感するためにも、富士見書房の元版の入手をお勧めする次第である。
|
|
|
|
|
|
左が秋田書店(新版)、右が富士見書房(元版)。
どっちがコワイ? |
|
犬神家の一族
(富士見書房→秋田書店→講談社漫画文庫) |
|
富士見書房「八つ墓村」カバー見返しの著者の言葉によれば、「八つ墓村」一作の執筆に延々4ヶ月半も費やしたそうで、そうとう苦労した様子がうかがえる。
結局、その後の刊行予定作品としてラインナップされていた「獄門島」「悪魔が来りて笛を吹く」「本陣殺人事件」「病院坂の首縊りの家」は、ついに幻のままとなってしまった。
|
悪魔の手毬唄
(富士見書房→秋田書店→講談社漫画文庫) |
|
now writing. |