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前田俊夫 / 橋本一郎 |
悪霊島(双葉社 昭和56年) |
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この作品を、どのように形容したらよいのだろう……。たまいまきこの「悪霊島」と読み比べても、とても同じ原作とは思えない。
本作は「週刊平凡」に、横溝正史の原作と同時進行で連載されたものである。したがって、本来はもっともっと長かったものを、上下巻合わせて800ページに編集し直したというわけだ。
それは場合によっては切り貼り作業的な面もあったと思われる。とにかくネームによる説明が多いのだ。
和服を着ていた女性が、次のページでは洋装になっているなど、珍妙な場面も頻出する。
推理小説を同時進行でコミック化するのは、たいへんなことだと思う。特に「悪霊島」では、冒頭から様々な伏線がはりめぐらされており、あとになってつじつまあわせに苦労したのではないかと思われる。
三津木五郎の八重歯、浅井はるの手紙など、のちのち重要なファクターになるにもかかわらず、劇画化の際に見落とされたものが多い。
なにより致命的なのは、磯川警部をコメディ・リリーフの狸オヤジに設定してしまったこと。おかげで、金田一シリーズに有終の美を飾るはずの感動的なラストシーンが、まるでドタバタ喜劇のような収拾のつけようである。
「コミック界初の本格的長編劇画!!」というコピーも、何が言いたいのかよくわからない。 |
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