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横溝正史シリーズII
「迷 路 荘 の 惨 劇」
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1978/10/14〜10/28
(全3回) |
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脚本:田坂啓 |
監督:松尾昭典 |
配役
篠崎倭文子:浜木綿子 / 糸:千石規子
篠崎慎吾:三橋達也 / 古館辰人:仲谷昇
天坊邦武:伊豆肇 / 古館一人:西沢利明
古館加奈子:御道由紀子 / 尾形静馬:滝沢双
速水譲治:桑原大輔 / 戸田タマ子:秋谷暢子
日和警部:長門勇 |
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「迷路荘の惨劇」評
ゆきみ |
「いやあ!これは・・・地底の別世界ですね!」
すべての謎を解き終えて、名琅荘の地下洞窟の奥深く足を踏み入れた金田一は、思わず感嘆の声を漏らします。
事件は、金田一が、恩人で今は不動産会社の社長の篠崎慎吾に、電報で呼ばれ、人物調査の依頼を受けることが発端となります。
早速調査に乗り出した金田一の前に、立ちはだかる連続殺人。
密室で殺された元子爵、地下の洞窟の奥で無惨な姿で見つかった下働きの娘、馬車の上で死んでいた元伯爵。
その背後に大きく影を落とす20年前の惨劇と、謎の片腕男。
複雑に、絡み合った糸をほどいていくと、そこには古くからの掟ゆえに逆らうことも許されなかった者の嘆きと、悲しいまでの愛情が、事件を引き起こしたことがわかります。
犯人が運命を断ち切るために自分で自分の始末をつけたことも・・・。
「八つ墓村」「不死蝶」でもそうですが、第2シリーズでは、鍾乳洞だの、秘密の地下通路といった物がたくさん登場します。
いずれも、コウモリがいっぱいいたり、鎧武者や、殺人犯が追いかけてきたり、底なし井戸があったりと、かなり不気味な世界なのですが、このドラマに関する限り、地下の世界は、美しいの一言につきます。(ネズミはいますが・・・。)
どうやって、あんなに明るくしたのか知りませんが、白・青・ピンク(?)などの光が交錯する中、白い砂のうえに、静かに身を横たえ息絶えている犯人の姿はあくまで神秘的で、神々しささえ漂わせています。
日和警部がぽつんとつぶやきます。「覚悟の自殺じゃよ・・・。」
原作での地下世界は、殺伐としていて、こんな美しさはかけらもありません。
これだけの幻想的とも言える雰囲気が出ているのは、犯人の人格設定の変更によるものかも知れません。
この作品は、「横溝正史シリーズ」最終話のため、2時間スペシャルにより近い感がします。
でも、原作のエッセンスを生かした丁寧な作りには、やはり、感心せずにいられません。
では、突然ですが、「横溝シリーズ」最後の日和チェーック!
まず、お糸さんとの掛け合い。
名琅荘のヌシといわれ、80歳を越えようかというお糸さんの前では、日和警部もまだまだヒヨっ子なのかも知れません。
ほとんどドリフターズのギャグのように、日和警部が「あの婆さん、人をコケにしおって・・。」なんて、言ってる後ろにしっかりいたり、会話は、キツネとタヌキの化かし合い。う〜ん、いいですね〜。
最大のチェックは、「日和警部、ついに、苦手なネズミを克服か?」です。
ネズミが嫌いと言うことは、シリーズ全体を通してのことですが、今回彼は違った!
20年前の事件時に、下っ端として捜査に参加していて犯人逮捕にいたらなかった執念が、名琅荘の地下にうようよいるネズミの恐怖にうち勝ったのです。(ホントかな?)
「わしゃネズミ大嫌いなんじゃ!」と、情けなく部下にしがみつき、腰を抜かしながらも、「このネズミ、どこいくんかな?」と、勇気を奮い立たせてネズミの行方を追いかけたことで、地下洞窟の出口と、事件の解決へと辿り着くことが出来たのですから。
よかったね、もう、けんいちさんから「ドラえもん」なんて言われないよ。
後は、カミナリ嫌い(仮面舞踏会参照)を克服してね、ってもうこれで最終回だった!
ラストシーン、抜けるような青空の下、金田一耕助と日和警部は、二人は仲良く並んで馬車に揺られ、名琅荘をあとにします。
「あんたとは、いずれまたどこかで、新しい事件に取り組む折りもあるじゃろ、なあ?」と、決めたつもりの日和さんに、金田一は、「腐れ縁ってヤツですか?僕と日和さん。」と、茶化し、二人のはじけるような笑い声とさわやかな笑顔で、ドラマは幕を下ろします。
でもちょっと待って下さいな!
この馬車、事件の時、死体が乗ってたヤツですよ?気持ち悪くないんでしょうかね?
いやあ、慣れってコワいですね、それとも、単に何も考えてないだけ?
金田一役・古谷一行と日和警部役・長門勇は、横溝ドラマ史上最強の名コンビでした。
本当に、もっと二人で、たくさん新しい事件に取り組んで欲しかったよ〜!
ともあれ、連続ドラマ・「横溝正史シリーズ」はこの作品を最後に終了、古谷一行主演の「金田一耕助の傑作推理」と銘打った2時間スペシャルが始まるまで、5年間ドラマは眠りにつくのです。
スペシャルとして再開する運びとなった背景には、やはり、このドラマの成功があってからこそ出来たことなのでしょう。
すべての金田一ファン&ミステリーファンに、このすばらしい作りのドラマを、是非見て欲しい、知って欲しいと願う次第です。
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